感想 ドストエフスキー『白夜 感傷的な小説(ある夢想家の思い出より)』

白夜/おかしな人間の夢 (光文社古典新訳文庫)

 

 『白夜 感傷的な小説(ある夢想家の思い出より)』。

 感傷的な小説…、「センチメンタル・ロマン」と本ではルビが振られていた。

 タイトルがよい。

 まずこれは、恋愛ものの話だ。

 恋愛ものの「センチメンタル・ロマン」であると言える…。

 なんというか非常に感動的というかロマンティックというか、なんとも言えない終わり方をする。

 美しい小説だと思います。

 まあ、美しい小説というと、なんというか素朴すぎる感想だが、この小説のあのなんとも言えない終わり方、雰囲気を言葉で表現する気力がただいまない…。

 それに「この小説は美しいね」と言える小説はそんなに多くないと思うのです。

 あと、主人公が「ナースチェンカ」と語っている女の子の名前を連呼する(「ああ…ナースチェンカ!」みないな感じで)のだが、それもなんか熱に浮かされた感じがしてよかった。

 そして、最後は感動。

 

それは奇跡のような素晴らしい夜だった。親愛なる読者よ、僕達が若いときにのみありえるような、そんな夜だった。満天の星で、あまりにも明るいので、見上げていると、こんな空の下に、怒りっぽい人間だの、気まぐれな人間だの、そうした雑多な人間が本当に存在し得るだろうかと、どうしても自分に問いかけずにはいられない。

これもまた、若者らしい質問だが、どうか神様があなたの心にもなるべく頻繁に、こういう質問を送ってくださいますように!(p.9)

 

 「どうか神様があなたの心にもなるべく頻繁に、こういう質問を送ってくださいますように!」。

 こういう発想はなかった。ドストエフスキー

 

 以下、この小説の最後の文章。

 

ああ、完全なる至福の瞬間だった!あれは、人間の長い一生分に十分足りるほどのものではないだろうか?……(p.133)

 

 恋って美しいですね。